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アリスの世界 その魅力と不思議<中>【コラム】

2020/01/08 LINE はてなブックマーク facebook Twitter

出版から150年以上、世界中で読み継がれている「不思議の国のアリス」。後世の表現者をも魅了してやまない独特の世界観とその魅力を紹介する「不思議の国のアリス展」が福岡市美術館で開催中だ。その見どころを、3回に分けて紹介する。 

 

ルイス・キャロルは本業の数学講師以外にさまざまな顔を持つ多才な人だった。
  意外なのがその商才だ。58歳のとき発案した「切手ケース」はヒット商品となった。「不思議の国のアリス」初版で挿絵を担当したジョン・テニエルの絵を表紙にあしらい、種類別に切手を整理できるポケットが付いている。今で言うキャラクターグッズだ。既に小歌劇版が演じられるなど「アリス」の人気は不動のものになっていた。

ルイス・キャロルが発案した切手ケース 
Lewis Carroll,The Wonderland postage stamp case.The Rosenbach,Philadelphia  


   ヒットしたもう一つの背景として、展示の企画制作を担当した東映文化事業室の高見沢庸さん(52)は「英国の郵便事業の発展がある」と指摘する。低価格と料金前払いを柱とした郵便制度改革が実現し、支払い証としての切手が1840年に世界で初めて登場。誰もが安く手紙を送れる近代郵便システムが普及した。
  そんな時代の反映か、キャロルは手紙魔だった。家族や知人の子どもたちに宛てた膨大な信書が残されている。イラストを交えたり、鏡文字を使ったり。受け取る側もわくわくしたことだろう。
  日本ルイス・キャロル協会西日本支部長の下笠徳次山口学芸大教授(英語学)は、研究者の立場からキャロルの文章を高く評価する。「話の展開が完璧。次が読みたくなるように書かれている。英文の構造もシンプルで、近代英語のひな型になっている」
  アマチュア写真家としても名を知られたキャロルは、俳優、科学者、画家など多くの著名人を撮った。アリスもモデルとなり、わざとみすぼらしい格好をした1枚が残っている。(藤村玲子)

「アリス・リデルの肖像」(複製)From The New York Public Library   

=12月25日西日本新聞朝刊に掲載=

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